ご挨拶

 昭和51年に『甍技塾』を開塾して以来、百数十名の塾生と生活をともにしてきましたが、とくに気になっていますことは「教えてもらっていないことは解らなくて当たり前」という「マニュアル型」が多くなっていることです。 仕事の上では「教わっていないことは出来ない」でもよいのですが、日常生活でもこのような考えでは、共同生活は成り立ちません。
わからないところでは何をしていてもよいという姿勢を修正するには、ともに寝起きを同じにして最低2年はかかります。 そして、そのような姿勢が修正されていくとともに、技能に伸びが見られるようになります。
 これからは「マニュアル型よりも思考型の人材を育てることが大切」との思いから、その訓練を毎日の生活をともにする、 師匠・先輩・後輩・仲間の中で行っていきたいと考えています。 そして「葺師としての心」ができていけば、 瓦葺きの技はおのずと向上するものと思います。 塾生たちが自分自身の追いかけるものを見つける手伝いをする場所、それが『甍技塾』なのです。

塾長 徳舛 秀治

 40周年を迎えて、あらためて、甍技塾塾生は、徳舛敏成初代塾長の「甍は魂の通う道 心して葺くべし」の理念の継承に努めたいと思います。この40年は、決して平坦な道ではありませんでした。何度も地震が列島を襲い、その都度、流布される風評に反論し、瓦の復権に取り組みました。特に阪神淡路大震災では、甍技塾が淡路島にあり、多くの塾生が駆けつけ、被災住宅の修復などで、復興に貢献しました。今後もこのネットワークを大切にし、日本の屋根文化の継承者としての矜持を共有したいと思います。
 和瓦にこだわりながらも、時代の変化に対応する柔軟性を持ち続け、時代を超えて評価される存在でいたい。そして甍技塾で学んだわれわれの感性を信じたい。甍技塾塾生はいかなる困難にも立ち向かう事ができると信じています。

会長 嶋本 宏信